スクラップド・プリンセス
Story



旅をつづける三兄妹の前に吟遊詩人のキダ ーフが現れる。軽いノリで接してきた彼の正 体は賞金目当ての暗殺者だった! キダーフ の操る魔蟲の針がかすり意識不明の重体に陥 ったパシフィカ。彼女の命を救うため、レオ 達は薬草があるという太古の遺跡へと向う…。

脚本    土屋理敬
絵コンテ  坂本 郷
演出    園田雅裕
作画監督  佐野英敏



「すてプリ」の舞台であるラインヴァン王国は、一見、栄華を極めているように見える。 だが、その内情は決して一枚岩ではなさそうだ。15年前の《廃棄王女》の誕生が王国に与えた影響は大きい。王室から「この世を滅ぼす猛毒」が誕生したというのは、物凄いスキャンダルなのだ。そして「廃棄王女」の生存が確認された今、王国内部に何が起こるのか・・・。 そこをふまえ、パシフィカ達の旅路と並行して描かれる王国側の動きを見ると面白いだろう。

そんな王国の中で、多大なる力を持っているのが今回クリスを養子にした〈バロネス〉ことアイリス・バイラッハ。見た目は温厚なおばさんだが、彼女に対するクリスの態度が示すように恐るべき実力を持っている。その正体はクリスの所属する特務部隊《オブスティネート・アロウ》を統括する責任者。王国を影で支える恐るべき老女だ。クリスを自分の養子にし、パシフィカの双子の兄、フォルシス王子に近づける彼女の真意は何なのか。

そのフォルシス王子は、王室にとって最大のタブーである〈廃棄王女〉の事を、どこか心配しているようにも見える。パシフィカとフォルシス。未だ互いの存在を知らぬ兄妹は、いつか出会う日は来るのだろうか。

その他にも今まではコメディ・リリーフだったレオ君の意外な剣の冴えや、第二話で登場したドイルの再登場など、見所の多い第5話。なんと言っても強烈な印象を残すのは、魔蟲(バグ)の使い手である暗殺者キダーフだろう。

語尾に「〜ねい」と付ける口癖が特徴の彼は、即効性の毒を持つ大量の魔蟲を独特の鍵盤楽器で操る。音なき殺しの旋律の使い手、〈サイレンサー〉。魔蟲の制御は非常に難しく、それを自在にこなすキダーフはまさに「殺しの職人」と言えるだろう。

魔蟲の毒に冒されたパシフィカは、苦しみの下で「自分さえ死ねば、みんな幸せになれる」と呟く。前回、タウルスの町で無関係の人々を《中継点》の餌食にしてしまったばかりなだけに、その言葉は重い。そんなパシフィカに対し、「キレイ事を言うな!」と一括するシャノンだが、妹の苦しみは痛いほどわかっているのだろう。 「何があっても護るって誓ったんじゃないのか!」と自分を責めるシャノン。その言葉は、今回の魔蟲の攻撃だけではなく、パシフィカを縛り付ける《廃棄王女》としての宿命から 護れない自分を責めているようにも見える。

このシャノンの苦悩に、ある意味で回答を出しているのがラクウェルだ。丁寧な口調と柔らかな物腰とは裏腹に、彼女はパシフィカの命を狙うキダーフを殺す事になんの躊躇いもない。キダーフに向けた「託宣で何と言われようが、私の大切な妹です」「やはり滅びますか・・・」という二つの台詞に、パシフィカを護りシャノンをカバーする〈カスール三姉兄妹の長女〉としての覚悟が現れている。

最後に、ラクウェルが使用した魔法を解説しよう。食事が終わった後、キダーフの気配を感じ取るのに使用したのが警戒用の結界魔法〈楽園(アスガルド)〉。簡単に言えばレーダーの役割を果たし、自分の周囲、一定の範囲に入ってきた侵入者を感知する。意識を集中すれば侵入者の容姿や特徴も感知できる。常に追われているパシフィカ一行に取っては命綱とも言える魔法だ。

クライマックスで魔蟲の攻撃を阻んだのが、第一話でも使用した〈塞壁(ミスガルズ)〉。魔法の壁が盾となり、術者の四方を防御する。壁の範囲を広げる事で敵を圧殺するなどの攻撃にも使えるのは、この第5話を見ての通り。

「炎の民よ。踊れ!」という呪文詠唱で繰り出されるのが攻性魔法〈炎陣(ムスペル)〉。敵の足元で炎を炸裂させ、熱と衝撃で吹き飛ばす。

これらの魔法に加え、ラクウェルを無敵の魔導士にしているのが〈連続式起動呪文(パッチスペル)〉と呼ばれる補助魔法である。 これは、あらかじめ詠唱しておいた呪文を発動直前の状態で凍結、圧縮して意識の底に保存しておくもの。早い話が事前に呪文を「仕込んで」おく事により、いざ戦いとなった時、通常より短い呪文で魔法を起動させる事が出来るのだ。 呪文を唱えるのに時間がかかるという魔導士の弱点を克服した魔法であるが、難易度が高く使いこなせるのは50人に1人と言われる。それだけに、長い呪文を唱えなければならない敵に対して圧倒的な強さを誇るのは第1話を見ての通りだ。

その他、ラクウェルの魔導士としての能力については、また機会を見て解説しよう。だがラクウェルの真の強さはその魔法力にではなく、パシフィカを護るためなら敵の命を奪う事すらためらわない《壮絶な覚悟》にあるのだ。



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