スクラップド・プリンセス
Story



ふりそぼる雨の中、シャノンは一人の少女 と出会う。彼女は「スィン」という自分の名 前以外に何も覚えていなかった。兄、姉の関 心を引くスィンに心穏やかでないパシフィカ。 そんな彼女の前にゼフィリスが現われ、スィ ンは危険な存在だと告げる…。

脚本    大和屋 暁
絵コンテ  ムトウユージ
演出    粟井重紀
作画監督 未定



クリスを養子にしたバロネスと、第四話で登場した《ブラックホーク》のルーク・スターム少佐の密談から幕を開ける。ルークより「竜のような光」と「人型の何か」の戦いがあった事の報告を受けるバロネス。さらに二人の会話から、ラインヴァン王国の隣国ギアット帝国の存在が明らかになる。

ギアット帝国の第三皇女セーネス・ルル・ギアットは≪スカーレット≫と呼ばれる組織を率い、ここ二、三年、不穏な動きが目立っているという。未だ姿を見せぬセーネス皇女と、≪スカーレット≫は、どのように物語に絡んでくるのだろうか。そしてスターム少佐の「廃棄王女は、世界の力の均衡を一気に崩壊させるだけの力を持つ」という言葉は真実なのだろうか。

そんなフィクサーぶりとは裏腹に、バロネスはクリス宛てに来たウイニアの手紙を部隊内に回覧するようなお茶目さも持ち合わせている(ここで無言で微笑むジルとファファルがいい味を出している)。クリスに対しては“温和な養母”としての姿勢を崩さぬバロネスだが、普段から自分の力を誇示している人間より、笑顔の奥に底知れぬ刃を隠し持った人間の方が恐ろしい。バロネスの命を受け、クリスはパシフィカに≪廃棄王女≫の烙印を押したグレンデルの託宣について調査するため、マウゼル教会のホーグ枢機教を尋ねる。

ホーグ枢機教に「廃棄王女と会ったが、邪悪な存在に思えなかった」「タウルスの町を抹殺しようとしたのは本当に神なのか?」と尋ねるクリス。どこまで本心で言ってるのかわからないが、その直前にグレンデルの託宣の的中率に関する疑問を提示している事から、枢機教に揺さぶりをかけていると見るべきだろう。クリスは白兵戦だけではなく、話術に関しても、かなりしたたかなようだ。

クリスにプレッシャーをかけられたホーグ枢機卿の元に、息つく間もなく謎の美女・ステアが現れる。枢機卿の態度や「ガリルの役割を引き継ぐ」という発言から察するに、ステアもガリルと同じ≪ピースメイカー≫なのだろうか。筆者的には、その後、枢機卿にお茶を入れに来た女性神官コレットちゃんがポイント大。お茶をマズく入れてしまうあたりドジッ子の素養が伺え、今後の活躍が期待される。(そうか?)

ここで視点をパシフィカ側に向けよう。パシフィカの「ガリルは何故、自分を直接ねらわなかったのか」という疑問や、ラクウェルの魔法に関する発言がチェックポイント。当然のように買い物をシャノンに押し付けるパシフィカの手腕も見所である。そのシャノンがサブタイトルの「捨て犬少女」スィンを拾ってしまった事により、カスール三姉兄妹の関係が微妙に歪み始める。

悪意のない(ように見える)行動で、三姉兄妹を引っ掻き回すスィン。微笑ましい場面であり、シャノンもラクウェルもこの小さな乱入者を歓迎する素振りさえ見えるが、なぜかパシフィカだけが苛立ちを覚える。

まるで何かに魅入られたかのように、スィンを可愛がる兄姉の変化を見てパシフィカは戸惑う。また「スィン・・・。シャノンが好き・・・。パシフィカもシャノンが好き?」というスィンの問いも、パシフィカに取ってはボディーブローのように効いてくる。目を反らせて「お兄ちゃんだから・・・。嫌いじゃないけど・・・」と答えるパシフィカに、微妙な乙女心が見え隠れする。

そんな中で、何が一番、パシフィカを苛立たせているのか・・・。それは風呂上りのスィンの髪を、ラクウェルがシャノンと同じ形に結ってやる場面で決定的になる。 パシフィカのチャームポイントでもある鮮やかな金髪・・・。それは同時に、黒髪を持つシャノン&ラクウェルと並んだ時に、残酷なまでに「血縁の違い」を浮き彫りにする。そこに「黒い髪」を持つスィンが現れ、兄姉の愛情を受け出したら・・・。

親の愛情を一身に受けていた幼児が、妹や弟が出来て親の関心がそちらに向くと、物凄く嫉妬する事がある。大人の目からすれば微笑ましいワガママに見えるが、社会との関係が希薄な幼児にとっては、親との結び付きが自己存在の全てであり、親の愛情が他者に向く事は重大問題なのだ。 同じように≪廃棄王女≫としてさすらいの旅を続け、地域社会や組織に所属する事なく、他者との結び付きが希薄なパシフィカにとっては、シャノンとラクウェルの妹である事が、アイデンティティの全てなのである。

第一話のコラムでも書いた通り、パシフィカがラクウェル&シャノンの妹でいられるのは「血縁」によるものではない。ラクウェル&シャノンが、絶対的に自分の存在を肯定し、護ってくれるから、パシフィカは妹でいられる。だが、もし、他の「誰か」が、自分のその地位を脅かすとしたら・・・。そして、その「誰か」が、自分の持っていない「黒髪」を持っているとしたら・・・。この第七話でパシフィカが抱いている疎外感が、決して単なるワガママや自己中心的な嫉妬でない事がおわかりいただけるだろう。

金髪のパシフィカがぽつん、と離れ、黒髪の三人が寄り添うのを見ているシーンに、彼女の疎外感が集約されている。そんなパシフィカの前にゼフィリスが現れ、「スィンを殺すのに協力しろ」と衝撃の発言をする。ゼフィリスの真意は。そしてスィンの正体は。様々な謎とともに、物語は次回へと続く。



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