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ラインヴァン王都ザウルスを目指して進む機動要塞スキッド。スキッドの中での生活は想像を遥かに越えた未来の技術に彩られており、三兄妹にとっては驚きの連続である。更に加速するため巡航形態に変形するスキッド。だがその直後スキッドが停まってしまった…。
ゼフィリスと彼女の“前の主”とおぼしき青年ベクナムの別離のシーンから幕を開ける。それまで感情の無いマシーンのように振舞ってきたゼフィリスだが、ここでは激しい感情の動きを見せ、泣き叫ぶ。ベクナムの面影を持つシャノンの寝姿を見守るなど、まるで恋する乙女のような仕草を見せ、今までの無表情ぶりが決して本来の姿ではない事をうかがわせる。ここでゼフィリスが言う「貴方が望まれたのなら、私は・・・」という台詞はいったい何を意味するのか。
「貴方」とは、おそらくベクナムの事であろう。ここで思い出されるのが《プロヴィデンス・ブレイカー》と《ガーディアン》に関する計画だ。パシフィカと、彼女を守るシャノン&ラクウェルの存在は、ゼフィリスたち《ドラグーン》と主であるベクナムによって計画されたものなのだ。
ゼフィリスはこの計画をシャノン達に黙っていた事を、若干気にしているふしがある。だがもう一人のドラグーン(厳密には元ドラグーン)であるナタリィは、計画の実行に微塵のためらいもない。ナタリィにとっては、シャノンやパシフィカですら、計画を遂行するための道具に過ぎないのだ。
「ラインヴァン王国に戻らねば一日につき千人殺す」というシーズの脅迫を受け、王都ザウエルに向かうパシフィカ達。だが、ナタリィからすれば、みすみすと敵の罠にはまるようなもの。ベクナムの計画を遂行するためなら、ラインヴァンの人々が何万人殺され様とナタリィには関係ないのだ。パシフィカたちの足止めをするため、移動要塞スキッドを停止させるナタリィ。「あいつらは人間に危害を与える事は出来ない」というセーネスは、手動でスキッドを起動させようとする。だが、もはやドラグーンではなくなったナタリィは、人間に干渉する事が出来るのだ。彼女は果たして、何をするつもりなのか・・・。
また、この話では、少しづつ明かされてきた作品世界の謎が整理される。今から五千年前。人類はマウゼル教で神とされている存在、異種知性体と戦った。ゼフィリスたちドラグーンや、第五話でキダーフが使用したバグは、この時に人類が開発した生体兵器だった。その時の人類側のリーダーがジョージ・ブラウニン。マウゼル教において魔王とされている存在だ。ブラウニンは予知能力を持つ女性シリアの助けを借り、未来予知システムを完成。人類は異種知性体の出方を予知する事により、かろうじて互角の戦いを繰り広げた。
だが、シリアの裏切りにより人類は敗北。文明や知識を奪われ、その生存領域をダストヴィン大陸に限定された。封印された人類はマウゼル教によって支配され、《ピースメイカー》は人類が必要以上の知恵をつけないように監視しているのだ。(封棄世界の文明は「中世」と呼ばれた時代に保たれている)。ダストヴィン大陸の語源が「ゴミ箱」というのは、非常に意味深である。そこには、この世界が「封棄世界」であるという事の他に、もう一つの意味が隠されていそうだが・・・。
わずかに残された外側の人類勢力は、人類解放のための計画を立てた。それにはまず《ピースメイカー》を倒す事。そのために封棄世界に送り込まれたのが《プロビデンス・ブレイカー》とそれを守る《ガーディアン》の因子だ。人間の遺伝子情報を使って世界中にバラまかれた因子は、五千年の時を経て集結。それが唯一、《ピースメイカー》に対抗出来る《プロヴィデンス・ブレイカー》であるパシフィカと、彼女を守る《ガーディアン》・・・シャノンとラクウェルなのだ。
物語が壮大なスケールに拡大していくが、この話ではキャラクターたちの細かい芝居にも注目したい。ロブスターの食べ方がわからす戸惑うパシフィカ。嫌いなキノコをよりわけるシャノン。自分の存在にかかわる説明を受けたのに、まるで理解していないパシフィカと、そんな彼女に苛立つセーネス。その二人を見て「だいぶ打ち解けてきたみたいね」と言うラクウェル(個人的には、「言葉尻に“じゃん”をつけるな」「別にいいじゃん」というセーネスとパシフィカの会話がツボに入った)。 細かい芝居とキャラクター描写の積み重ねが、物語のスケール拡大によりキャラクターが矮小化する事を防ぎ、作品イメージを地に足が着いたものにしている。どのような謎を内包していようとも、「どんな世界か」というのは、あくまで設定であってテーマではない。「その世界で、どのように生きるか」が、すてプリという作品のテーマなのだ。
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