スクラップド・プリンセス
Story



王都ザウエル沿岸に到達したスキッド。ラインヴァン王国軍はペータシュタール将軍指揮のもと、領海侵犯してきたスキッドに対しての大規模な攻性魔法を準備する。ピースメーカーの力により動けなくなってしまったスキッド。状況打開のためシャノンが出撃した。




ピースメイカーの挑戦を受ける形で、移動要塞スキッドに乗り、ラインヴァン王国の王都ザウエルに戻って来たパシフィカ達。この行動をギアット帝国の侵略と決め付ける軍部をいさめようとするバロネスだが、国王は戦略級攻性魔法『奈落』の使用を決定する。条約で禁じられているはずの『奈落』を使用する事は、ラインヴァンとギアットの全面戦争突入を意味した。「軍人は命令に備え、待機する」と言うルーク。フォルシス王子は父であるバルテリク国王に考えを改めるよう提言するが一蹴される。

一方、ピースメイカーもシーズ、ソコムの登場により四体(既に倒されているガリル含む)が勢ぞろい。ステアは王国軍のペータシュタール将軍と、マウゼル教会のホーグ枢機卿を利用し、国王の戦意を煽り続ける。そして戦雲立ちこめるザウエルに、ウイニアとレオがやってきた・・・。

何本もの支流が大河に注ぎ込むように、それぞれの人間模様を描いてきた登場人物たちが王都に集結する。前回よりクリス、ファファル、ジル、デニスら特務部隊の面々も勢ぞろい。王国軍最強の特務部隊を統括するバロネスのフィクサーとしての一面が浮き彫りとなる。今回は、第五話からずっと王国側の動きを見てきたクリスに注目しよう。

親の顔も知らず、物心ついた時から特務戦技兵として生きてきたクリス。その運命はカスール三姉兄妹と出会う事で少しづつ変わっていった。特に第四話でシャノンに敗北した事は大きな衝撃であったと思われる。孤独の中で“戦うためのマシーン”として生きてきたクリスが、感情を剥き出しにした初めての瞬間だったかもしれない。 その矢先に、クリスはバロネスによって任務を変えられてしまう。バロネスの養子となる事で上流階級に潜り込んだクリスは、直接カスール三姉兄妹を追う事はなく、グレンデルの託宣と廃棄王女の再調査に勤しむ。

「すてプリ」とは「廃棄王女」であるパシフィカの物語であると同時に、「廃棄王女」を取り巻く人々の物語でもある。「廃棄王女」を「恐るべき、忌むべき存在」だと思っていた人々の考えが、その当人であるパシフィカとの出会いによって変わっていった。だがクリスはパシフィカとの関わりが非常に希薄である。元々敵対する存在なのでコミュニケーションを取る機会がないし、前述の通り、彼のモチベーションはシャノンに傾けられていた。それでは、クリスは変わる事が出来なかったのか?そうでない事は、毎週「すてプリ」を見ている皆さんもおわかりだろう。

第二話のコラムでは、レオについて「武者修行というモラトリアムを経験する事によって、人に押し付けられた価値観にとらわれず、自分で見た物を、自分で考え、成長する存在」と書いた。同じように、クリスにとって「バロネスの養子」という立場は、モラトリアム・・・成長のための猶予期間・・・の役割を果たしたのではないか。

グレンデルの託宣やマウゼル教会について客観的に調べる事が出来る。またフォルシス王子やエルマイア王妃など、「廃棄王女」の血縁となる人々と直に接する機会も与えられた。そこで彼は、「恐るべき、忌むべき存在」である「廃棄王女」にも、血をわけた肉親・・・遠い空の下にいる彼女の身を案ずる肉親がいる事を見せつけられる事になる。与えられた任務に絶対服従だった戦技兵時代と違い、バロネスの養子となってからのクリスには「自分の目で見て」「自分の頭で考え」「自分で判断する」機会が与えられたのだ。

本編中でキャラクターの口から語られていないので、これは推測に過ぎないのだが・・・クリスの配置変えをしたバロネスの真意も、ここにあったのではないだろうか。物心ついた時から職業軍人であったクリスを、あえて戦士の職務から切り離し、モラトリアム(猶予期間)を与え、人間として成長させる・・・。それが夫バイラッハ男爵の死により、特務部隊の長官を引き継いだバロネスの狙いだったのかもしれない。はるばる自分を訪ねて来てくれたウイニアを無視しながらも、彼女からもらった手紙をじっと見つめるクリス。彼の胸中は果たして・・・。

セーネスたちは戦略級攻性魔法の存在を察知。スキッドの防御機能ならば持ちこたえられるはずだったが、システムがピースメイカーによって凍結されてしまった。三体集結したピースメイカーを相手に、圧倒的不利を覚悟でシャノンは立ち向かう。ゼフィリスのドラグーンとしての姿が、初めて実体化する。迎え撃つのはシーズ。対峙したシャノンが「スィン・・・」とかつての名を呼ぶのが切ない。

激しい戦いの中、ついに戦略級攻性魔法『奈落』が発動。スキッドは破壊され、乗員は行方不明となってしまう。

『奈落』の影響は沿岸の町にまで及んだ。破壊の爪あとが残る町に立ち尽くすパシフィカは、一切の記憶を失っていた。通りすがりの青年フュ―レに「何にも思い出せない割には楽しそうだな」と言われたパシフィカは、記憶を失う事によって初めて「廃棄王女」の宿命から逃れられたのかもしれない。その無邪気な笑顔は、あまりにも切ない。




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