スクラップド・プリンセス
Story


依然、王城にて囚われの身のパシフィカは、ラインヴァン王国国王バルテリクの前にひきだされる。同じく王の間に連れてこられたシャノンに、王国軍への協力を要請するペータシュタール将軍。その頃ラクウェルたちはパシフィカを救出しようと計画を練っていた…。




実母との再会を果たした事に気づかぬまま、パシフィカは実父であるバルテリク国王の前に引き出される。15年ぶりの父子対面の感動もなく、恐怖に顔をゆがめ、パシフィカの首を跳ねろと言う国王。 生き別れとなった娘の身を案じ続けたエルマイア王妃とは全く逆に、国王は呪われし廃棄王女が自分に災いをもたらす事を恐れながら生きてきたのだろう。

第一話のコラムでも書いたが、筆者は家族の絆とは、血縁によるものではなく「互いの存在を無条件に肯定できるかどうか」にあると考える。「廃棄王女である」という理由でパシフィカを無条件に否定するバルテリク国王は、「廃棄王女であろうとも」無条件でパシフィカを肯定するシャノンやラクウェルと対称的である。ゆえにパシフィカにとって、国王は「家族」でも「親」でもないのだ。またエルマイア王妃が、どのような形であれ「親となった者の責任」を最期まで全うしたのに対し、国王がその責任を最初から放棄しているのも対称的である。

一方、国王の前に引き出されたシャノンとシーズは、記憶を無くしたパシフィカと再会する。パシフィカの姿を見るや否や、近くにいた兵士の体を支配し彼女を殺そうとするシーズ。その少し前の会話にあったように、シーズはあくまで機械的に任務を遂行するピースメイカーとしてのスタンスを崩そうとしない。王都ザウエルを放浪した二人の間には、かつてのシャノンとスィンを思わせる行動が垣間見られた(第18話で、シャノンとスィンの出会いを再現するかのように、シャノンがシーズに傘をさしかけるシーンは泣けた・・・)だけに、「結局、どこまで行っても平行線のままか」と目を閉じるシャノンの言葉が重い。

廃棄王女の存在を盾に、「我々が世界を支配するのを黙認しろ」とステアに要求するペータシュタール。その要求に対し、ステアは「ピースメイカーの存在を利用しようとする人間が出て来た場合、人類文明を白紙に戻す権限が与えられている」と言い放つ。その言葉通り、第二級神罰執行形態を取ったソコムが無差別に王都を破壊し始める。

支配する神にとって、人類は無知なままが好ましいという事か。「人類の進歩段階に応じて作動する神のリセットスイッチ」という概念はSF映画・小説でよく見られるが、旧約聖書にあるバベルの塔やノアの箱舟の逸話、ギルガメッシュ叙事詩を始めとする世界の洪水神話、終末思想にまでその根源を遡れて興味深い。

人類の9割を間引くという大殺戮の中、全ての元凶をパシフィカに押し付けるバルテリク国王と兵士たち。そんな中、シャノンはパシフィカをかばい、「妹を殺すか守るか選べってんなら・・・俺は最後までこいつを守ってやる!」と言い切る。

たとえ自分の妹が世界を滅ぼす存在だとしても守るのか・・・。物語のスタート時から、シャノンは繰り返しこの問いを投げかけられてきた。クリスに、キダーフに、ステアに、シーズに。そして、パシフィカ自身にも。 「すてプリ」のテーマとも言えるこの問いに、シャノン自身が明確に答を出した瞬間。失われていたパシフィカの記憶は甦る。それはすなわち、シャノンがパシフィカを守る覚悟を決めたのと同じく、パシフィカも廃棄王女として生きていく覚悟を決めたという事だ。第16話でラクウェルが「このまま廃棄王女とみんなに知られないまま、誕生日が来れば・・・」と呟いたように、記憶を失うという事は(ある側面から見れば)パシフィカにとって廃棄王女の呪縛から逃がれるという事でもあったのだ。

混乱の中パシフィカは連れ去られる(ここでルーク少佐が原作設定通りの見事なムチさばきを見せる)。ステアはシーズに、人間たちに故意に必要以上の情報を与え、意図的に今回の事態を招いた事を告白する。五千年間、人間の愚考を見つづけてきたステアは、健全な世界を一から作り直す事を望んでいたのだ。感情を露にしないピースメイカーであるステアが、人類の愚かさを語る時に顔を大きく歪めるのが興味深い。ステアとあくまで機械的に任務を遂行するシーズとの間に、微妙な違和感が発生する。

ソコム、ステア、シーズ。三体のピースメイカーが神罰執行形態を顕現させ、町には数百の中継点が放たれた。シャノンはゼフィリスを信じ、遂に完全融合を果たす。この時のシャノンの「お前らは、俺たちから多くのものを奪い取った。だが、信じる自由と疑う自由、その自由までは奪わなかった」という言葉に、「神と人類の戦い」の鍵が込められていると筆者は考える。激戦の幕が切って落とされた王都とは離れた場所で、フォルシス王子もベルケンスの「あんたが死んじまったら、壊れちまった王都を誰が建て直すんだ!」という言葉に自分の成すべき事を自覚し、覚悟を固めた。主要人物たちがシリーズを通しての問いかけに結論を出す中、セーネスが三体のギガスを率いて戦場に駆けつけ、物語はクライマックスを迎えようとしている。



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