スクラップド・プリンセス
Story


王都上空で対峙するドラグーンとピースメーカーたち。王城に閉じ込められたパシフィカは、窓の外からの壮絶な戦いを目にし、愕然とする。そして彼女を救おうと王城に向っていたラクウェルとレオたちの前に中継点の群れが立ちふさがった……。




日没の空に激突する、三体のピースメイカーとシャノンのドラグーン。そしてセーネスたちのギガス。スケールの大きい戦闘で、物語は幕を開ける。ゼフィリスの説明によると、ギガスとはエミュレーティング・ドラグーン・システム・・・。仮想人格を持たない後期生産型のドラグーンだという。

激戦の最中、クリスはオブスティネート・アロウの面々を従え、城内に捕らわれたパシフィカの救出に向かう。 何をするつもりかという仲間たちの問いに、クリスは答える。「バロネスは僕に言った。自分の意志を大切にしろと」。そしてクリスは、パシフィカの暗殺に二度関わり、その後、グレンデルの託宣について調べた事を告白する。「みんなあの化け物を見ただろう?あれは本当に神の御使いなんだろうか?」

自分の体験を踏まえ、自分の頭で考えたクリス。この言葉は、一度ピースメイカーに交渉を持ちかけながら、その絶大な力を見た途端に掌を返し、「神の御使いだ」と平伏してしまうペータシュタール将軍ら大人たちと対称的である。

そんなクリスたちの前に立ちふさがるルーク。「廃棄王女を移動させるという命令は出ていないはずだ」というルークに対し、クリスは「命令ではなく我々の意志です」と言い返す。そんなクリスたちを「“廃棄王女を殺せ”という命令は出たが、“逃がすな”という命令は出ていない」と見逃すルーク。ルークは組織の中に生き、命令に従う事で家族を養っている人間だ。クリスやレオのように、理想のために全てを投げ出す事は出来ない。その立場を踏まえつつも、理不尽な命令を盲信する事なく、人間としての配慮を見せる。前回、パシフィカを殺そうとする兵たちをさりげなく制したのも、その一環と言えるだろう。その反面、「どういう立場に置かれるのか、わかってるんだろうな?」と『自由意志には、重大なる責任が伴う』事をクリスたちに訓え諭す事も忘れない。「正しき大人」の姿を垣間見せたキャラクターと言えよう。

地下水路を進む小型船の中で、パシフィカはクリスに自分を助けた理由を問いただす。初めて「誰かの味方になりたいとか、助けてあげたい」と思った事を告白するクリス。続けて彼は、「そしてそれは、凄く嬉しい事なんだよ」と自分の心境を吐露する。物心ついた時から戦うための兵士であった彼に、人間らしい心を取り戻させたいと願うバロネスの親心は、土壇場で実を結んだようだ。なによりもそれは、クリス自身のためなのだから。

圧倒的な力を誇る三体のピースメイカーを前に、苦戦するシャノンとセーネス達。ソコムの攻撃を受けたシャノンに対し、追撃をかけるシーズが「許せ」と一言呟くのが印象的だ。シーズの攻撃を受けたドラグーンを、ステアが捕縛する。今、まさにとどめを刺され様とした瞬間。戦線を離脱したと思われていたセーネス達がステアに起死回生の一撃を加える。ステアの死により、リセット執行を中断されたシーズとソコムは、一時退却する。

仲間や家族と念願の再会を果たすパシフィカ。兄姉に駆け寄るとみせかけて、第八話で売ってしまった馬、ドラグノフとの意外な再会に気を取られる所が妙にリアルである。 ひとときとはいえ、戦いは終わった。だが、大きな犠牲が出た。その原因が自分にあると言うパシフィカに対し、シャノンは剣を向ける。

前回、シャノンは「どうしてパシフィカを守るのか」という周囲からの問いに対し、自分の中で答を出した。そんなシャノンは、今回はパシフィカに答を求める。 「誰だって他人の事には無責任だ。適当な事を言うもんだ。(中略)だから俺は、そんな連中の言う言葉なんざ今更どうでもいいんだ」と言い放つシャノン。この言葉は、現実に生きる我々にとっても耳が痛い。人は遠くの世界の社会悪や差別に対しては、声高に正義を叫ぶ。だが自分の身近にあるトラブルに対してはどうだろう?見て見ぬふりをしてしまうのではないか?

リスクを背負わない口先だけの正論には、人を動かす力は無い。自分の立場や未来を投げ打ってパシフィカを守る決意をしたシャノンとラクウェル。そしてレオやクリス。さらに自らの命を賭けたフューレの尊い勇気。これこそが正義であり、人間の持つ強さなのだ

それでも自分のせいで大勢の人が死んだと言うパシフィカに対し、シャノンは「他人の事なんか聞いちゃいねぇ!てめぇはどうなんだ、って聞いてんだ!」と詰め寄る。 「死にたいのなら、一瞬で殺してやる。もし生きたいのなら、どんな事をしてでも守ってやる」・・・。この言葉は、第一話でのパシフィカの「もし、私が世界を滅ぼす猛毒だったら・・・。その時はお兄ちゃんが私を殺してね」という言葉に対する、明確な答と言えるだろう。そう。パシフィカの生死を決定するのは、シャノンでも、他の誰でもなく、パシフィカ自身でなければならなかったのだ。

「私・・・。生きたい・・・」と言うパシフィカに対し、シャノンは「生きるぞ・・・全力で・・・」と呟く。守られるだけで直接的戦闘力を持たない主人公パシフィカの、最大の戦いが始まろうとしている。そう。“廃棄王女”としてではなく、一人の人間として生きるための戦いが。

なお今回、アイキャッチがモノクロなのは、ピースメイカーとドラグーンの戦いの最中にあえない死を遂げたバルテリク国王に弔意を表してである。哀しき旧悪から逃れられなかった国王の死とともに、この世界に新しい光が訪れる事を信じたい。



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